Blippo+

YouTube ショートよりずっと面白い

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Blippo+ on Steam
Blippo+ is a live-action, off-cable TV simulator. Channel-surf the stars and discover the staticky, radical world of Planet Blip through its soaps, sitcoms, news, weather, and talk shows. But don’t touch that remote—everything’s about to get bent.

とても地球によく似た異星「Blip」の文化や自然について想像したり、「Space Bend」に関する一連の事件を追いかけたり、ただ大量のギャグを見続けたりする。プレイヤー側から何かを操作して謎を解く要素はなく、TV番組のようなインターフェースをしたビジュアルノベルという印象だった。

外国で地方局の番組を見ているようでもあり、80-90年代の欧米のテレビを、これは宇宙人が制作した番組だと言い張っている狂人が編集した映像を観ているようでもある。確かに、おそらく完璧に再現されていると思われる80年代風のファッションやデザインを見ると、どこか宇宙人っぽさを感じる。『Quizzards』 を除いて。あれは完全に地球人のオタク。

80年代風のスタイルを再現することに、なぜこれほどまで情熱を傾けられたのか。最後まで見ていると、ただ笑えるから以外の理由がそこにあるような気がした。ノスタルジーを超えて、現代では失われた何かがそこにあるというより、80年代のバラエティ番組的なノリ自体は、見た目が変わっただけで、今でもあまり変わっていないのかも。ずっと内輪の話をしている芸能ニュース、視聴者数稼ぎのためのマッチポンプだと批判される過熱報道、それに妙に感化されて革命的行動に出る若者たち。そうした言論や運動が規制されたりせず、自分の意見を言うことを恐れている人などいないと描いていること自体が、詐欺師のようにも見える80年代の楽天的な雰囲気を表現しているようだった。

正直なところ、今のテレビがどうなっているかは、自分はほとんど見てないのでわからないのだけれど、流し見しながら、番組の内容と関係があるのかどうかわからないことを適当にしゃべるのは、実家でテレビを見ていたときの感じを思い出した。いや、テレビを見ながら微妙にずれてる文句ばかり言っていた父親の姿に近づいているのかもしれない。こういうところも含めて、自分が見た番組について、人と共有したいと思わせるような作りこみがあった。


自分が特に好きだったチャンネルは、Time Dilation Network (TDN) 。でたらめな見た目の物体に嘘過ぎる解説がついてくる『Let's Tique!』はベタだけど笑ってしまう。おばさんの全力の変顔も見れる『Psychic Weather』や、超人気番組の『Bushwalker』もある。

番組ではMicrowave Theater (MWT) の『Party Music Nonstop』が一番面白かった。振付はKent Boydという人がやっていて、振付の仕事集を見る限り80-90年代スタイルに造詣が深そう。なんとなく80-90年代レトロって結構流行ってる印象があったけど、それだけでもこんなたくさん仕事あるんだ。

ネタとして一番好きだったのは、『Movie Maniacs』のDottie Demo。単純に見た目が面白すぎて目が離せなかった。これで何かシリーズ作ってほしい。演者のProvvidenza Catalanoさんは教師もやっているらしい。他の出演作を見ると全く印象が違う。何を見てこの人に爆弾魔をやらせようとしたんだろう。

Blippoの番組はほぼすべて具体的な元ネタがあるらしい。各番組の元ネタは英語のWikipediaにまとめられている。当時のテレビを知っているひとから見たらもっと笑えたんだろうな。


ゲーム中の映像にもたまに出てくるように、元々Playdate向けに作られたゲーム(?)で、Playdate版では実際に11週間かけて番組が配信されていたらしい。Steam版と違って先週の番組などに自由に切り替えたりできず、一度見逃すと再放送されるまで見ることができない。インタビューを読むと、そうしたところも含めて本当のテレビの感じを再現したかったらしい。

また、絶対に辿り着けない世界について想像できることに気づいてほしいという思いがあったらしいが、その世界を80-90年代のテレビとした理由とは?あまり深い理由とかはなく十分要件を満たすからそうしただけかもしれないけどすごく気になる。Bioshock とか2000年代中盤のゲームがちょうど死の匂いを感じるほどの古さを出すために1960年代を舞台にしていたなら、そこから20年スライドしただけなのかもしれない。

完全に偶然だけどエンディングテーマ聞いてneco眠るの『ENGAWA DE DANCEHALL』思い出した。