Rain World: The Watcher DLC

光り飯

Rain World: The Watcher DLC
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You are a nomadic slugcat, both predator and prey in a broken ecosystem. Grab your spear and brave the industrial wastes, hunting enough food to survive, but be wary— other, bigger creatures have the same plan... and slugcats look delicious.

このゲームの、プレイヤーとNPCの区別を意図的に無視した設計が、「開発者がプレイヤーを侮らずに困難な障害を配置する」というこれまでの「公平さ」とは異なる、新たな公平さを実現しているという考察がある[1]。また、Rain Worldは直接参照されてないが、壺のゲームのエンディングで似たようなゲームとしておすすめされていたりすることから、ジャンキーな操作性がそのゲームとのつながりを増す事例の研究[2]とも無関係ではない。

いつまでたっても操作に馴れず、NPCの行動も予期できない、このゲームに自分が全然歓迎されていない雰囲気に、自分もなぜか魅力を感じたり、むかついたりしていた。

ただ、Downpour DLCをやったときは正直ちょっと慣れを感じ始めて、どこか魔法が解けたように感じる瞬間があった。大抵のマップはベースゲームからの流用で、複数のキャラをプレイするうちに各リージョンのつながりや重要な施設の大体の位置を把握できるようになっていた。各キャラに固有のスキルはあるが、戦闘やプラットフォーミングなど既存の障害に対してプレイヤーに少し有利に働く程度、という印象だった。DLCとしては十分な実装だと思う。

比べるとこのWatcher DLCは『Rain World 2』ないし完全新作の続編のように感じた。ほぼすべて新規マップだからという当然の理由もあるけど、Watcherの固有スキルである透明化やホバリングが現在のRippleレベル(ベースゲームでのカルマレベルに相当)で変化するのが特に大きな違いだと思った。

このRippleレベルで変化するスキルによって、カルマゲートのように特定のステータスに達していなかったり、槍を持っていないと絶対に届かないといったハードゲート的な仕組みが多かったベースゲームとは異なり、Rippleレベルが高ければ容易に通ることができるが、そうでない場合にのみアイテムを持ち込まないと進めない、というスキルゲート的な仕組みが導入された。

Fractured Gatewaysなど、Rippleレベルが下がると相当移動が厳しくなる場所もあるが、任意の場所でワープできることで完全な詰み状況を回避できるようにはなっている。全体的にハードゲートがほぼなくなって、回避策や迂回路も多くあり、Rain Worldらしい厭世的な雰囲気は残りながらも探索要素はベースゲームからずっと楽しくなっている。


Coral Cavesに辿り着くまでに大体3時間以上、新マップを探索して次のエコー(Spinning Top)に出会うまでさらに3時間かかった。つまりこれがまず何をしなくちゃいけないゲームなのかを把握するのに6時間くらいかかったことになる。

その後は、エコーに会うたびに新しいリージョンに移動したり、割と頻繁に新しいスキルがアンロックされることもあり、細かい進捗を感じることが多かった。Survivorのキャンペーンとはだいぶ違って「ゲーム」らしくなっている。自分を置いてそんなちゃんとゲームみたいにならないでよ、という寂しさもすこし覚えた。

エコーの居そうなところを探すと大体各リージョンのチャレンジングなところや個性的な部分を通るようにデザインされているのは本当に良かった。そして逆にあまりにも難しそうな経路にはスカベンジャーの倉庫やカラーパールしかなかったりする。まあいいんですけどね。

Spinning Topのクエストが完了してからは割と同じ経路(Daemon → Outer Rim → The Throne)をなんども通ってしまったのもあってかなり虚無だった。Rotを広げたりパスを閉じることに関しても、どこかのリージョンの特定の場所を探すというよりは、リージョン間を移動して寝るの繰り返しなので少し作業感があった。実際、何かありそうなところを探しても、「ああ、多分ここにSpinning Topがいたんだな」となって終わる。まあクリア後要素ってそういうものかも。でも、Spinning Topクリア後にあまり訪れていないリージョンに来て懐かしい気持ちになることがあったのはよかった。

個人的な探索でのハイライトは、まだホバリングもできない時にStation AnnexからUnfortunate Evolutionに移動したときかもしれない。Outer RimからThe Throneの最上階まで移動したけど結局その時点では何も発見できなかったのも、Survivorでカルマレベルを上げる前にDepthsに辿り着いたときを思い出してなぜか感動した。


ヴィジュアル面はもともとすごいけど、シェーダーや光源など、技術的にすごい進歩している感じがした。特に前景部分に重なる光の表現が多くのマップで追加されていて、なんでもない地下洞窟の通路みたいなマップでも綺麗に見える。「悪臭の峡谷」ですら美しい。

Ancient Urbanは美しいだけでなく、マップデザインだけであんなにストーリーを語れるという一つの証拠になる気がする。はっきり過去と明示されたリージョンがあることで、他のリージョンもすべて時空がバラバラで、距離だけでなく非常に長い時間を旅してきたことを示唆している。それと対比されるように、Spinning Topが現世を生きた時間が極めて短かったことが明かされることで、自分がナメクジネコとしてSpinning Topを追いかけてきたことに何か特別な意味があったかのように錯覚する。

ただ、Survivorで初めて「壁」を登った後の景色の美しさのことを思い出すと、Watcherのマップは特徴的な部分と平凡な部分の差みたいなものが少なかったかもしれない。Outskirtのような「平凡」なリージョンがあまりなく、どれも特徴的で印象に残るようなリージョンだった。良いことではあるんだけど。どこを歩いていてもある程度美しく、眺めてて満足感がある。全体的に表現やマップ設計の腕前が上がった結果がちゃんと表れている感じ。でも、もしかしたらいまいちなリージョンがどこかにあったほうが、そのギャップみたいなものから何か変なものが生まれたりするかもしれない。これを書いていて、そのいまいちなリージョンというのはBad Warpで訪れる場所としてすでに作成されていたのかもしれないと今思いつきました。


好きなリージョン:

S: Ancient Urban
A: Signal Spires, Fetid Glen, Turbulent Pumps
B: Coral Caves, Migration Path, Shattered Terrace
C: Torrential Railways, Desolate Tract, Shrouded Stacks, Stormy Coast, Pillar Grove, Verdant Waterways, Torrid Desert, The Surface, Rusted Wrecks, Sunbaked Alley
D: Badlands, Cold Storage, Aether Ridge
移動が大変すぎる: Heat Ducts, Salination
演出は好きだけど... : Fractured Gateways
他: Daemon, Unfortunate Evolution, Outer Rim

Ancient Urbanは明らかに異質な雰囲気(暖かく、平穏であるということ)を感じて、下水道から街に出ていく道すがら、自然とこの世界について考えさせられていく仕組みがすごく楽しかった。他リージョンで辛酸を舐めさせられた巨大な蛾が、下水道ではずいぶん小さくなって大量に登場する。「Ancient」とリージョン名についているから明らかではあるんだけど、文明が崩壊する前あるいは直後で、地上に巨大な生物が跋扈する隙間がまだない時期なんじゃないかと推測できる。自然と「まだ人間がいるのか」という興味が湧いてきて、その答えが、下水道に落ちる影、大通りの窓に移る姿とじわじわと明かされていく。言葉を一つも使わずにここまで世界に入り込めるようなマップは自分はあまり経験したことが無かったのですごく印象に残っている。

Signal SpiresやFetid Glenは見た目も好きだし、エコーに出会うまでの経路も仕掛けがあって面白かった。特にSignal Spiresは見た目が群を抜いて好きだし、クジラで尖塔間を移動しているときの景色はプレイ全体を通しても特に印象に残っている。Fetid GlenやTurbulent Pumpsは「何かありそう」という場所にちゃんとエコーがいて、この世界と気が合ったように感じた。この辺りはどのリージョンでエコーに出会ったかですごく上下しそうな気はする。

他は大体同列なんだけど、Coral Caves, Migration Path, Shattered Terrace は見た目や雰囲気が特に印象に残っている。Migration Pathでドリルヤドカリと一緒に大移動するところは個人的に序盤の山場だった。

それ以外のリージョンも、Spinning Topクエスト後に探索したこともあって上で挙げたリージョンと比べるとというだけで、なにがしか思い出はある。Torrential Railwaysは常に豪雨が降っている割には平和だったのを覚えている。Desolate Tractも上部構造と地下施設で別れたマップ自体が個性的な上、Roachとか言う新しい生物にあったときの「絶対やばい奴いるじゃん」感も面白かった。

Badlands, Cold Storage, Aether Ridgeは単純にマップが過酷でできれば通りたくなかった。特にBadlandsはlocustsが本当にきつかった。普通に歩くとアイテムを持ち込まないとほぼ何もできず死亡する場所が多く、逆にRippleレベルが上がって「向こう側」を移動できるようになるとただ駆け抜けるだけになってしまう(これはほぼどのマップでもそうだけど)。

特別大変だったのはHeat DuctsとSalination。どっちも落下死や溺死というカモフラージュがあまり通用しない死因がメインだからなんだけど。ポール渡りと水泳は一生ミスし続ける気がする。Heat Ductsは構造的に実質一方通行のようなマップが多いのも気になった。クリア後は色々なルートで各リージョンを通らないといけないので、そのルートにこれらのリージョンが入っているとしっかり気分が滅入ってしまった。

Fractured Gatewaysは……大体Badlandsでlocustsが嫌だったのと同じ理由なんだけど、ここは本当にそれ意外のギミックはないので逃れようがなかった。西端のマップでデカいクジラがlocustsを一網打尽にするのは見ていて気持ちが良かった。

Outer Rimは何度も往復しすぎて何もわからなくなってしまった。最初にUnfortunate Evolutionからここに辿り着いたときはとても印象深かったんだけど。その後は、「やっぱりまだ何もないのか」と「また往復しなくちゃいけないのか」という気持ちを押し殺しながら(全然出てしまっていたけど)向かい風の長い砂漠を歩いたり、ボーっとしていなければ引っかからないくらいに配置されたrotに引っかかってしまってゲームとの距離感が離れてしまうときがあった。


  1. https://www.youtube.com/watch?v=0UQqY6zWWZ0 ↩︎

  2. https://gamestudies.org/2003/articles/schmalzer この文献では、ジャンキーな操作性が、ゲームとプレイヤーのつながりを増す場合があるだけにとどまらず、プレイヤー自身に身体の「不完全さ」を気づかせる例も挙げている。これにより、一般的に「操作性が良い」と言われるものも所詮、あくまでゲーム業界が規定した「標準的な」身体を持ったプレイヤーにのみ適用されていることを示唆しているというところまで言っている。 ↩︎