Heaven's Vault

あの Nebula Vault したんか

Heaven's Vault
Heaven’s Vault on Steam
An archaeologist uncovers a lost history in an ancient space Nebula. Award-winning narrative adventure game with hieroglyphic language puzzles, from the creators of 80 DAYS.

おれは古代文明を調査して言語解読をしなくちゃいけないのに、様々な状況や出会う人々、助手のロボットや直属の上司である教授までもそれを邪魔してくる。「じゃあ、もう遺跡の調査とか辞めたほうがいいってこと?」という気分になる。

誰も(せこいスリの Tapi をのぞいて)喜ばないのに自分はなんでこんなことをしているんだ。言語解読なんてただの趣味で自分が Nebula で一番得意なわけでもない。そもそもこの一連の遺跡の調査だって乗りかかった船でしかないし自分の仕事に少しでも関心した様子を見せてくれるのは記憶の曖昧なロボットだけ。誰かのパスを周回遅れでたどっているだけで新しい発見なんてなにもしていないんじゃないか。

好きな時に好きなタイミングで出かけて遺跡で見つけたものを売りさばいて生計を立てているだけで船もロボットも盗品か組織のお下がりでしかないのに。都会の権威のある教授のお気に入りだからというだけでなんだかデカい顔をしている。考古学者なんて肩書きも地元では何の意味もないのにまるで心はそこに残っているかのような態度で、ただどちらにも馴染もうとしていない自分を正当化しようとしている。安全圏で badass hero を装おうとして社会では周囲の期待やルールにビビりながら生きている。

これはおれのことだし、成人の全人口における58~70%のことでもある。おれは所詮これからどれだけうまくいってもガキの砂場のお山の大将にしかなれないしそれにすらなれない。Aliya も Myari もそれをわかっているしそれがこの Nebula の限界であり Empress がロボットを埋めたときに(あるいは宇宙人がこの Nebula に墜落したときに)それは運命づけられていたのかもしれない。


多分、宇宙を移動しながらその星雲のリソースを略奪する鷲型宇宙人がたまたまこの Nebula に到着(不時着?)して、現地のまだ未熟な文明を支配しながら次の Vault に向けて準備を進めていた。ただ、どこかのタイミングで人間が反旗を翻して鷲型宇宙人を排除し人間の帝国を建てた。ただ、宇宙人が残したロボットや技術、思想や宗教は引き続き持ち続けていた。 という一周目の理解は全然違った。

人間は「種」として、ロボットとともにこの Nebula に入植してきたた。ただその人間を乗せた船は着陸時に失敗し惑星をバラバラに破壊した。船から出た人間は惑星の破片(Moon)上で暮らし始めた。しかし、船が次の Vault の準備のために水を大量に消費することに気づいた人間は船を封印し、新天地を求めて Nebula を航海した。自由だが荒っぽい Age of Sail が終わりを告げ人々が定住し始めると次第にロボットが統治をし始めた。失われたテクノロジーが告げる世界の終わりを畏れロボットに管理される人間を見ていられなくなった Enkei は何かのきっかけで習得した制御語により、ロボットの統治を打ち倒した。Enkei は人間の歴史を作り出すことを名目に(そして、制御語が他の人間に知られることを防ぐために)、過去の遺産や本を焼き、自身を神格化し、最終的にはホッパーの技術を応用し自分自身の記憶をロボットに写し永遠に統治しようとした。しかし、その試みは失敗し、Enkei は Withering Palace の地下に閉じ込められることになった。Enkei 亡き後も繁栄を続ける Iox の裏で、いまだにロボットにより管理された鉱山に閉じ込められた鉱夫たちがいた。ロボットが撤退し完全に逃げ道を失った鉱夫たちは偶然「古代の神」を掘り当てる。神は自らの倫理コアに従い鉱夫たち(あるいは最後の一人)を Withering Palace に転送した。Enkei は鉱夫たち(あるいは鉱夫と埋められていた他のロボット)とともに Iox に侵攻し帝国を破壊するも、 Enkei 自身がロボットであるがゆえにロボットによる統治を嫌った人間たちににまた埋められてしまう。

Iox (ロボット)に支配されながら物質的には豊かな生活を送る Maersi は Steel Empire 時代の人間の生活を思わせる。活気にあふれているが小競り合いの絶えない Renaki は Age of Sail。Iox は女帝の生まれ変わりを信じる Myari が統治していることもあり神聖帝国時代。Elboreth は Ancient Time ? なんか根拠が薄い気がする。

Enkei が推し進めたのは、迷信に満ちた既存の文明を破壊して人間中心の新たな文明を築くといういわゆる近代化のようでもあり、同時にロボットが築いた工業化への反抗でもあり、そういう相反する性質を持ったことを同時に進めた Enkei 自身が最終ロボットになって自分自身が作った Iox を壊滅させた。Enkei 一人で常に矛盾する性質を持って変化を続ける Nebula 自身を体現しているように見える。

Nebula 自身、最も古い文明そのものがより進んだ未来的文明から来たもので、結局 Enkei 自身も Darkness を無視できずその脅威を除く方法をずっと探していた。最終的にそういうのも含めて 「Vault」 による人間の文明の繰り返し(Loop)を断ち切るかどうかをその場のノリで選択できるのが「ゲーム」という感じがして好きなのかもしれない。「こういう人間はこうなるべきなんだ」というルールが先にあるのではなく、「よくわかってないけどなんかボタンを押したらそうなってしまった」という結果から因果を推測するしかない、という感じが。

最初は「鷲型宇宙人がいたんじゃないの?」みたいなところから始まって、「第七の神」の像が足しかないのは壊されたわけではなく、壊れた船の破片を象ったものなので元から足だけの姿だった?みたいに情報を集めていくうちに解像度が上がっていくのは楽しい。断片的な lore を集めて歴史や世界の背景を想像する、という RPG でよく見るやつを、おまけ要素としてではなくそれ単体でゲームとして実装してくれてる嬉しさがある。

  • 多分 Enkei が言っていたと思うんだけど、「loopism はロボットたちが人間を安心させるためにでっちあげた話」というのが面白かった。なんか、どこまで分かって言ってるんだろうみたいな。
  • 最後にロボットのホログラムに鷲が表示されて、「モデルが鳥だからちょっと前傾姿勢だったのか」と思ったけど、そっちよりもキャタピラの理由が知りたかった。
  • Crown を取られたくなくてずっと Myari に会わなかったなんだけど、ゲーム中の日数では30日以上報告を引き延ばしていてよく待っててくれたなと思った。まあ話が話だからさすがの Myari でも何も報せが無ければその方がいいと思ったのかもしれない。
  • なんで鷲なのかというのがよくわからないというか、そもそも最初に Heaven's Vault でやってきた世代が残したであろう碑文も曖昧な書きっぷりなのは、この Nebula に Vault してきた時点でもはや失われたテクノロジーだったから(ちょうど Aliya が最後に Vault を選択するときのように)?だとすると元々は鷲型宇宙人が作ったという線も残っているのでは?
  • 実際、"種"としてこの船で Nebula に運ばれてきた人間は奴隷階級の種族で、ロボットはその世話係だった。船が不時着したとき本当の主人だった鷲型(かどうかは知らないけど)知性体は全滅したが人間を管理するという命令は残っていた。人間はロボットたちが話す制御語を言語として学び古代語として体系化した(文字は人間がでっちあげたものだったかもしれない)。
  • そう考えると、Ethical Core は人間の生命は尊重するけど自由は尊重しないことや、「奴隷と主人」という関係はいつか崩壊するという繰り返されるテーマとも合う気がするし、なによりプレイヤーが Six に対してひどい態度をとる選択にも「かつての主人に対する反抗」という意味が生まれる。
  • Enkei が Nebula の歴史のターニングポイントに常に登場してその時代の「英雄」に出会う構造になっているので、最初に Enkei が Steel Empire を倒したときも誰かがいたのかもしれない。Mazwai?

一番面白かった展開は Six が女帝の Enkei だったことが判明するところで、それまでは Six って冗談がいちいちうっとうしいし慇懃無礼なくせに妙なところで過保護で調査の邪魔になるし苦手なんだけど手伝いはまじめにやってくれてるしなんかこういう構造上マスターに逆らえない存在をぞんざいに扱うのって道徳にもとる行為だよなという理由でリスペクトしておこうと思っていたら本当に全然やばいやつだったとなるのが良かった。しかも、女帝のときの記憶を取り戻したおかげで慇懃無礼な感じが消えてただの無礼になるので逆に印象が良くなった。

他にも、ポストアポカリプスとかカーゴカルトとかグノーシス主義とかの要素や、諸行無常とか栄枯盛衰とか、真の解放なんて存在するのかとか、人間とロボットの違いとはみたいな話もある。そして、人生に行き詰り陰りが見え始めた30代の大人が再度輝きを見つけようと過去に答えを探る行為についての話でもある。特に最後の話は自分にも関係しているからどっちに転んでも不安になるのでやめてくれと思って進めていた。

  • 自分はずっと Aliya に対して過保護な様子から(ハゲなのもあるけど) Six を男性だと思っていた(ロボットの性別に意味があるのか不明だけど)。そのせいか分からないけど実質的に同じことを言っていても Enkei なら許せるけど Six だと我慢できないみたいなのがあってちょっとやばい偏見かもしれない(Six に「Obedience」と言われたときもすごいむかついていた)。

やってみた感じ、古典的(1990年代後半?)なアドベンチャーゲームに言語解読パズルという軸を追加して、NPCとのめんどくさいやり取りやサブクエの報酬が無意味になりがちな問題を解決している気がした。そもそもアドベンチャーゲームの報酬って次のシーンに進めること以外になくって、『Pentiment』みたいにスキルチェックの仕組みを導入しても追加の小噺を読めるくらいしかない印象があった。

言語解読という特性が、ある程度自由な順番でマップを探索しながら進められる仕組みともあっている。得る順番に関わらず新たなフレーズや単語は言語そのものの解析のヒントになる。

逆に言うと、サンプルが一つでも増えれば助けになるという報酬の重さが負担にもなっていて、一つでも取り逃すとわからない単語が残ってしまうのではという不安があった。そのせいで、驚きや裏切り、嘘や秘密にあふれた物語に本気でイラついてしまうこともあった。このイラつきが冒険と過去の罪や不誠実の解消を同時に進めなくてはいけない典型的な英雄物語の主人公が常に持っている感情なのかもしれない。

UIがもっさりしていたり、探索中の怪しい挙動があったり快適な操作感ではなかったのも昔のアドベンチャーゲームっぽく思った原因かもしれない。実際、開発チームの規模からしたらオーパーツじみた完成度とボリュームなんだけど。

  • 『Oxenfree』と違って一周目からでも会話中に一時停止できるのは有情だった。

言語解読自体もそれなりに面白いけど、表意っぽい文字で種類はそんなに多くないし、時代や地域の違いによる語彙や文法の変化を意識したりする必要もなく、難易度はそこまで高くなかった。オマケと言うほどではないくらいに楽しめるけど、あくまで物語やゲームプレイに軸を通すための機構という印象だった(そもそもゲームクリア自体に言語解読は必須ではない?)。オープンワールドRPGで戦闘の代わりに言語パズルがあるような。たまに強敵も出てくるけど慣れれば作業。でも、「Heaven's Vault」とかここで出てくるんだみたいな驚きのある単語もあった。

ある意味、古代語はロボットが使う制御用構文のためのいわゆるプログラミング言語のようなものだから、自然言語と比べると語彙が制限されていて文法もシンプルなのは、まっとうな理由がある。あと、(多分)一周目の最初で Huang から聞かされる、 「Empress buried robots」は robots を rebels、buried を banished と読み違えると、別の内容としてそのままタイムラインに記録されたりとかもあるらしい。

長めの文章に知ってる単語を当てはめて区切りを推測するパートはもうちょっとなんとかならなかったのかとは思った。実際、動詞/名詞の先頭に付く文字や、単語同士を連結して別の単語にする文字などを理解し始めると、単語を当てはめるのではなく区切りの位置だけを推測させてほしかった。